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2013年4月14日日曜日

3.11のひと月前に書いていた原稿より

『人間と環境への低レベル放射能の脅威』のあとがきとして、3.11前に書いていた長めの原稿が見つかりました。。。2011年2月の原稿です。


「ペトカウ効果」周辺と最近の研究
竹野内真理
 
 
スターングラス博士の推薦により、BEIRⅢ(1980)の付属書にペトカウの発見における機序は詳述されている。また、前述のゴフマンも、保健物理学の祖と呼ばれるカール・Z・モーガンを始めとする著名な科学者も、低線量における上に凸の反応は、それぞれ以降に確かめることになった。さらにロシアでは、ペトカウとは別個の研究として、ブルラコーワが既に上に凸の曲線を見出しており、本書のロシア語版翻訳にも携わっている。
序章の最後でスターングラス博士が説いているのは、上記に挙げた胎児、乳児その他の放射線にぜい弱な集団における目に見える障害のみならず、一見健康そうに見える一般集団における諸問題である。すなわち、エイズなどの感染症へのかかりやすさ、また、精神発達や学力の低下などからもたらされる社会全体の基盤の劣化が付け加えられている。エイズの問題などは一見突飛な仮説にも思えるが、実は現在の遺伝子工学の知識をすれば、エイズの増殖過程はガンと同じであるという。エイズや成人T細胞白血病は、レトロウイルスというウイルスがその人が元来持っているガン抑制遺伝子を溶かして発生させる。ガンの発生においても、発ガンウイルスの遺伝子が患者の組織に付着すると、ガンの発生を抑えるRB蛋白やP53抑制蛋白を分解してしまうというメカニズムが現在では解明されている。スターングラスはさらに、エイズウイルスそのものも放射性降下物による変異で生じたという仮説を立てているのであるが、この仮説が正しいかどうかはもちろん訳者にはわからない。しかし、放射線降下物が仮に人類に死をもたらすウイルス変異の原因になっていたとしたら、今後検討課題となるべき問題であることは確かである。
 
明らかになりつつある知見(あとがきの2章より)
あとがきの2章の内容は、80年代以降に見出された多岐にわたる内容となっている。注目すべきは、低線量で上に凸の曲線を描く、逆線量率効果が、他の学者たちによる研究で明らかにされてきた例が列挙されている点であろう。また、核施設労働者の間でのガンや白血病の増加、さらに米国の再処理工場における労働者の子供の白血病増加の研究も重要だ。また、スターングラス博士が60年代に行った、核実験と乳児死亡率の相関は、90年代になって、カナダのホワイトの研究でも立証された。
『死にいたる虚構』でも詳しいのであるが、Ⅴ-81986年の米国での死にいたる夏」では、チェルノブイリの影響による米国での人口における死亡率の統計が、上に凸の曲線が描かれている。それのみならず、カルフォルニアの鳥についても、またドイツの新生児死亡率で持ちェルノブイリ事故後に増加が見出されており、これらの事象が同時期に偶然起きる確立は限りなく少ない。このような個体レベルにおける上に凸の影響は、この他にも米国における、乳がん、低体重児、免疫不全となって現れているという(この辺りの研究に関しては、『死にいたる虚構』や近刊の『低線量内部被曝の脅威』にさらに詳しい)。
原子力業界では長年重要視されなかった、ペトカウが提唱した酸素フリーラジカルによるストレスは、その後医学会や薬学会で立証されるようになった。Ⅵ-10「フリーラジカルによる生物学的障害」では、ペトカウが1986年には発見していた老化とフリーラジカルの関係という重大事項を加えている。
さらにグロイブは、細胞膜のみならず、ミトコンドリアや食細胞など、その他の細胞小器官との関連をも言及している。食細胞は侵入した菌やウィルスを殺すために食細胞の膜で活性酸素を作り出すという。ミトコンドリアは独自のDNAを持ち、細胞核の変異に比べ変異が蓄積されやすいという。また、ミトコンドリアはアポトーシスを引き起こす作用もあり、ミトコンドリアの異変から様々な病気が生み出されることが近年分かってきている。2002年には鹿児島大学歯学部の馬嶋教授が「酸化ストレス及び放射線障害における細胞内ミトコンドリアの役割」と題する論文で、放射線感受性決定の機序には、ミトコンドリア内活性酸素が深く関係していると述べている。これらの細胞小器官と活性酸素のメカニズムも今後注目されるべき研究課題であろう。
また本書では、酸化ストレスによるアテローム(動脈内壁への脂肪沈着)などの現象にも触れ、フリーラジカル起因の数多くの疾病、すなわち動脈硬化、白内障の形成、心筋梗塞後の心筋への障害、老人性痴呆、肝臓・腎臓障害、炎症、免疫反応の障害、老化、慢性関節炎、多発性間接障害、肺疾患、喘息などを列挙している。実際に近年脳卒中、心疾患などの増加はPrestonらによって2003年報告されているが、放射線起因のガン以外の疾病も注目されつつある現在、放射線起因の疾病がこれほどまでに広げられたら、原子力産業は、核施設労働者や周辺住民による訴訟の際、それこそ存続不可能となるだろう。
-11に記されている、「生体内の防御メカニズム」にある、酸化ストレスに対する防御作用の話も非常に重要だ。SODを始めとする体内にある酵素系および食事などから摂取するビタミンEを始めとする非酵素系の例が出てくるが、今日の知見と合わせても非常に新規的な内容である。ペトカウが特に研究で力を入れたのはこのSODだ。巻頭の「アブラム・ペトカウ博士に捧げる」でも書いたが、ペトカウの研究所が閉鎖されてしまったのは、被曝労働者において、このSODの活動量が高まっていることを発見した研究を行っている最中のことであった。グロイブはさらに、妊婦においても妊娠36週までSODの活動量が高まること、自然流産した妊婦の胎盤では、SODの活動量の増加が十分でないという知見を加えている。放射線起因の流産につながる非常に重大な知見である。
 
ペトカウの実績と「逆線量率効果」
少々専門的になるが、本書の中心議題である、「ペトカウ効果(理論)」に話を移そう。フリーラジカルそのものの研究は1900年代にさかのぼる。1900年、ゴンバーグ(Gomberg)によるトリフェニルメチルラジカルの発見と同時に、放射線の世界でも、1900年代には既にピエール・キュリーが水の放射線分解を概念化し、水分子が電離放射線によって破壊され、反応性が高いフリーラジカルが作られることを発見していた。1940年代には放射線によるフリーラジカルの間接作用は科学者の間で知られていたという。一方活性酸素の研究は、1950年にフリードビッヒ(Fridovich)らによってスタートされ、1969年マッコードはペトカウも数多くの実験を行なっているSODが活性酸素を取り除くことを証明した。生体内でのフリーラジカルによる活発な化学的相互作用が広く認識されるようになったのは、1980年代になってからのことである。
しかし、活性酸素の活発な議論が放射線防護の世界でなされなかったことは、本書でもグロイブが記しているとおりである。このことは、医学における分子生物学と分子遺伝学のテキストの中において、低線量放射線による多大な影響が見落とされてきたこと、それにより放射線のガン以外の疾病への影響を見逃してきた可能性があることは、原子力放射線研究センター(Center for Atomic Radiation Studies)の共同創設者で医学博士でもある故ドネル・W・ボードマン(Donnell W. Boardman M.D.)博士による著書『放射線の衝撃』の中で鋭く指摘されている。
ただし、近年の放射線関係のテキストを見ると、それがいくぶん変化してきているのが分かる。例えば2009年度版の『放射線基礎医学』には、高LET放射線(アルファ線、中性子線)ではラジカルが密に存在し、ゆえに再結合が起こりやすく、低LET放射線(X線、ガンマ線、ベータ線)では疎に分布するため、ラジカル同士が再結合を起こさずに標的分子と反応しやすいとある。そして、低LET放射線の場合は、1:2から1:3で放射線が直接作用する直接作用よりもフリーラジカルによる間接作用の寄与が大きいという。
また、同書の中には、活性酸素とその消去という項目がサイドコラム(Side Memo)として付与されており、そこには、まさに本書が扱っているテーマそのものが書かれてある。すなわち、活性酸素によりガン、突然変異、老化、炎症などのほかにも心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、リウマチ、パーキンソン病さまざまな疾病が引き起こされること、防護手段としてSODなどの酵素やビタミンなどがラジカルスカベンジャーとして働いており、放射線に被曝した時にもこのような防御装置が働いていることなどである。
 
 ペトカウ理論の周辺
 そのような中で1972年にペトカウが提唱した「細胞膜付近にあるフリーラジカルによる連鎖反応は、低線量率のほうが、高線量率のときよりも、激しく長く持続する」という発見は画期的なものであった。この最初の研究は人工膜を使ったものであったが、その後ペトカウは生体膜も使い、また他の研究者との共同のものも含め、92もの論文を発表しているという。この生体膜の中には、白血球膜、幹細胞膜も含まれている。そして本書の内容や巻末にある参考文献を見てもらえれば、ペトカウと共同研究した研究者、およびペトカウの成果に影響を受けた研究者が数多く存在していたことが分かるのである。
ペトカウは1980年、「私は、細胞膜病理学が発ガン性においては必要不可欠であることを信じている」と述べた。脂質を多く含む細胞膜における活性酸素による脂質の過酸化については本書でもいくども出てくる。また過酸化脂質がさまざまな病気をもたらすことは今日では一般に知られていることである。
米国スローンケタリング・ガンセンターのKolesnickは、2003年のガン遺伝子学の雑誌で、放射線が直接、形質膜に作用するというデータが近年現れつつあると記している。放射線が形質膜に当たるとセラミドを作り出し、このセラミドが、ミトコンドリアシステムを通してアポトーシス反応を引き起こすセカンド・メッセンジャーとして作用するという。ちなみに放射線によるDNA損傷の際も、このセラミドの作成が行なわれる。
フランスガン治療研究所のCorreは、2010年の論文の中で、過去何十年にわたり、DNAこそが電離放射線による主な標的と考えられていたが、細胞の分子レベルシグナルのイニシエーションに、細胞膜の関与はクリティカルであると述べている。電離放射線によって生じる活性酸素、活性窒素種により蛋白や脂質に変異がもたらせるという仮説は今や広くいきわたっていると書いている。
 日本国内の放射線の研究でも細胞膜損傷からの発ガンモデルを提唱して研究者がいる。Watanabeら〔1991〕は、哺乳類胎児細胞の培養系を用いた100200ミリグレイの低線量放射線照射実験において、細胞レベルにおいて、DNA突然変異頻度よりも悪性形質転換頻度のほうが高いことが見出した。Watanabeらは、この現象をDNA突然変異といった直接的な放射線障害機構ではなく、細胞膜への間接的な影響から発ガン過程がイニシエートされるモデルとして提唱している(『低線量放射線と健康影響』放射線医学総合研究所、2007年)。
また、横浜薬科大学教授の小澤俊彦氏は、放射線医学総合研究所在籍時に「放射線」と題する論文の中で、「ペトカウは、マウスの骨髄幹細胞を用い、X線照射によるコロニー形成能低下の抑制にSODが有効であることを見出した」という部分を引用している。
 さらに、ペトカウ効果について論じられている、上に凸の曲線は、「逆線量率効果」と呼ばれ、今日では低線量域において一般に知られている事象である。『低線量放射線と健康影響』にも、の逆線量率効果についてページが割かれており、また『放射線基礎医学』2009年度版にも明記されている。
 
バイスタンダー効果とゲノム不安定化
さらに上記の「逆線量率効果」を後押しする学説も確立しつつある。バイスタンダー効果とゲノム不安定化だ。本書にも登場するゴフマンは、「たった1個の放射線の飛跡でも、人間にがんを起こす」と主張したが、実際1996年には、Hei,T.K.らのグループがたった1個のアルファ線をマイクロビーム装置を使ってハムスターの卵巣細胞の細胞核に当てた際、生き残った細胞にも変異が起こることが証明した。さらに1999年に同グループは、細胞質への照射実験を行い、細胞質に放射線が当たって死ぬ細胞は少ないので放射線の影響は変異として残り、細胞核に当たるよりも、固体としてはさらに危険であること、また照射されていない近くの細胞にも被ばく情報が伝わることを明らかにした。(渡辺美紀子「連載・低線量放射線の影響をめぐって」より)また、Kadhim(1994)Wright1998)は、近隣細胞のみならず、それぞれ照射された細胞の子孫細胞に染色体異常が生じるのを発見し、これらは総称して「バイスタンダー効果」と呼ばれるようになった。(『低線量放射線と健康影響』より)
 バイスタンダー効果は、放射線による直接的なDNA損傷による影響だけではなく、放射線を直接被ばくしなかった「非標的細胞」にもDNA損傷やがん化が生じることを示唆している。結果として単位被ばく線量あたりのリスクは、低線量被ばくのほうが高線量被ばくよりも高いことになる。また、Grosovsky1999年に、「非標的効果」では、活性酸素ラジカルが「情報媒体」となり、周辺の細胞に「被ばく情報」を伝達するモデルを考察している。(『低線量放射線と健康影響』より)Grosovskyの研究はペトカウの発見に通じるものである。
もうひとつの非標的効果の機構が、「ゲノム不安定性」である。放射線を受けた細胞において、何代もの分裂を経過しても、突然変異頻度が遅発的に誘発され続ける現象であり、DNA配列レベルの変異、染色体構造の変異などさまざまなタイプがあるそうだ。また、細胞レベルのみならず、個体レベルでも、精子や受精初期に放射線照射を受けたマウスにおいて、胎生期、新生児期に調べてみると、染色体異常や遺伝子組み換えが観察され、ゲノム不安定性の誘導によるものと考えられており、放射線の遺伝的影響につながる重要な研究だ(『低線量放射線と健康影響』より)。このように、近年における放射線生物学の進展はすさまじく、細胞核のDNAへの標的効果以外の機構が次々と解明されている。
 
放射線の脳への影響
さて、動物実験では、精神発達や知能の低下などは大変困難なのは周知のことである。しかし、この脳の発達こそは人間を他の動物と区別するものであり、グロイブは以下のペトカウの重要な主張について言及している。「脳に関してはリン脂質が非常に多く、それについては逆線量曲線が当てはまる。」グロイブはこのペトカウの理論にスターングラスの疫学研究をつなげている。「この過程は胎児と幼少の子供の間で、神経結合の発達と組織を妨害することで脳の発達を遅延させ、ひいては、学習能力の低下や精神遅延として現われてくるのではないか」。その結果として、スターングラス博士が主張してきた核実験時代に生まれた世代の学習能力の低下が観察されたのではないかと考察するのである。人の脳における放射線の感受性の高さは、今後とも注目されるべき課題だ。
 ところでごく最近、脳に関する低線量被曝の研究で非常に重要な実験が放射線医学研究所の島田義也氏によってなされた。発がん高感受性モデル動物を用いた実験で、50mGyという低線量でゴーリン症候群における髄芽腫(脳腫瘍の一種)の発生率が上に凸の曲線を描いて増加したというものである。島田氏の研究で大事な部分は、遺伝子の解析から放射線起因のものと特定しているところにある。50mGyという低線量でこのような発生率が見られたこと、しかも放射線起因と特定した中におけるこの研究結果は非常に重要であり、実際に国際会議の発表でも注目を集めている。
 
5.社会問題に挑むペトカウ理論の継承者たち
ところでペトカウ理論を継承しつつ、チェルノブイリとイラクにおける劣化ウラン弾汚染という、現代における二大核汚染問題による健康障害を追及している科学者がいる。現実的な社会問題における重要な研究であり、かつ非常に今日的で緻密な研究なので少々長くなるが要約してみたい。
 
 ① ロシアのブルラコーワ博士
まず一人目の、チェルノブイリ事故影響の研究を行っている、ロシアのE・B・ブルラコーワ博士だが、巻末のグロイブのインタビューにあるように、グロイブのペトカウ効果のロシア語版翻訳にブルラコーワ自身がかかわり、ブルラコーワ博士のその後の研究につながったといういきさつもある科学者だ。
ブルラコーワ博士と14人の科学者らは1996年、チェルノブイリによる被ばくの研究を発表し、低線量被ばくにおいては、それまで考えられてきた直接的なDNA損傷だけでなく、以下のような副次的なメカニズムが生ずるとした。1、ペトカウ効果、2、単球欠損、3、赤血球の変形である。2と3に関しては、ペトカウ自身、幹細胞へのX線照射の実験を行っているが、骨に蓄積されやすい核種(ストロンチウム90、プロトニウム、ウラン、超ウラン元素など)が骨髄幹細胞の近くで低線量の放射線を与え続けると、正常な血球の製造を妨害する可能性がある。血球の中でも、低レベル放射線により、単球の激減が起こると、鉄欠乏貧血症(単球は鉄分のリサイクルを担うため)、細胞の免疫低下(単球はリンパ免疫システムを活性化する物質を選択するため)が起こる。
また、ニュージーランドのレス・シンプソン博士の発見を引用し、赤血球の変形により、おそらく細い管をすり抜けるのに障害となり、筋肉と脳から適切な酸素と栄養を奪うことで慢性疲労症候群、いわゆる広島や長崎でよく見られたブラブラ病が生じるというのである。ちなみにチェルノブイリのリクビダートルの間でも、ブラブラ病はよく見受けられる症状である(以上『劣化ウラン弾より』)。
 ブルラコーワ博士は、その後さらに研究を進め、ペトカウの提唱した上に凸の曲線から、上に凸と下に凸の山を合わせ持つ線量・効果曲線を見出した。ごく低線量の部分は、ペトカウ理論と同じなのであるが、それ以降には以下のような経過を辿るというのである。すなわち、放射線量とともに放射線の効果はまず増加し、低レベルのある線量で最大値にいたる。それから効果が減少し(あるいはマイナス側にまで減少し)、その後再び、放射線量の増加とともに効果が増加するという関係である。低線量域で凸を示す関係(ペトカウ効果)は、生体物質への損傷が始まる線量と、その修復システムが作動を開始する線量との間における低レベル放射線照射でもごく初期の関係である。そして修復システムが強く働くようになると、照射効果は小さくなり(適応応答)、ときには照射効果がなくなってしまったり、あるいは効果がマイナス側にまで行ってしまう(ホルミシス)。
 ブルラコーワ博士によると、低線量でのストレス反応のレベルは、それより20-30倍大きい線量で同程度であることも見受けられるという。つまり、線量単位あたりの効果のみならず、低い線量の方が高い線量よりも反応が大きくなる現象である。博士によれば、低線量における線量・効果関係は、単調な変化を示さず、直線的ではない。また、線量率が低くなると、細胞全体の損傷において膜の役割が相対的に大きくなり、膜の損傷と関連する細胞内構成要素の変化に新たな現象が生じることを考慮せねばならないという。ここで言う「膜」とは、細胞膜のほかに、核膜、ミトコンドリア膜、シナプス膜、赤血球膜、白血球膜をも含むものである。
さらに、チェルノブイリ事故の影響を受けた人々の間に免疫系の変化が認められているというが、これには胸腺と胸腺の中で発達するTリンパ球が関連しており、これらの細胞の機能が害されると、ウィルスや微生物に対する防御、腫瘍に対する抵抗性、免疫反応のバランス維持といった機能が損なわれるという。スターングラス博士が長年主張してきた免疫系への影響がロシアの研究者からも確認されていたのである。
ブルラコーワらは長年、細胞や生体器官における、活性酸素、脂質の酸化、抗酸化状態に関する、「酸化ストレス」を研究してきたというが、放射線被ばくに関しては、細胞死、細胞変異、DNA損傷、DNAとたんぱく質結合などの線量効果関係が熱心に調べられているのに対し、こうした「酸化ストレス」はいまだにほとんど研究されてきていないという。この酸化ストレスには、病気の悪性度、糖尿病、循環器系疾患、呼吸器系疾病、消化器系疾患、神経障害などが関わっているという。
ブルラコーワはリクビダートルの血液検査で15センチグレイ以下の被ばくグループで最大の抗酸化状態の変化が認められ、2025センチグレイの被ばくグループでは、対照グループのレベルに近くなっていること、また、がん発生データを見ても、1025センチグレイで凸のピークを示し、25センチグレイ以上で小さくなっている事を発見したという。これは、ペトカウが最後に行っていた研究である、被曝労働者におけるSODの活動性(つまり抗酸化状態)を測定した抗酸化反応の研究と共通するものである。
 
 ② カナダのロザリー・バーテル博士
 ペトカウの発見に早期から注目し、低レベル内部被曝の研究を行ってきたもう一人の重要な科学者がロザリー・バーテル博士である。湾岸戦争症候群における劣化ウラン内部被曝のメカニズムを以下のように説明している。劣化ウランは燃焼すると、30006000℃にも達するため、ウラン粒子はナノレベルの粒子となり、通常のウラン粒子と比べ吸入されると排泄されにくく、細胞核内のDNAに作用するだけでなく、細胞内でフリーラジカルを作るという(このようなナノ粒子はヒロシマ原爆の際の死の灰にも含まれていたことが疑われる)。その中には、ミトコンドリアも含まれ、ミトコンドリアDNAは、細胞核内のDNAと違いヒストンという淡白が結合していないため、核内DNAと比べ、16倍も損傷を受けやすいという。
さらに、細胞内のグルタチオンという物質は、ミトコンドリア内に生じた有害なフリーラジカルを処理するが、ウラン粒子が入ると結合してしまい、枯渇することで、エネルギーを必要とする心筋、腎臓、脳、肝臓などの臓器で障害が現れてしまう。生体防御を担っている免疫細胞にもこのような障害が及ぶと生体のウィルスやマイコプラズマといった病原体への抵抗力が低下し、実際湾岸戦争症候群の兵士にマイコプラズマの感染が見られる。ウラン粒子はさらに、肺-血液、血液―脳の間のバリアも通り抜けてしまい、脳細胞に影響が及ぶという。
 また、ウラン粒子が細胞質内に入り込むと、ウラン粒子によって生じるフリーラジカルの作用で酵素の機能が低下するほかにも、酵素以外の機能を持つ様々な蛋白も障害を受け、多くの変性物質が生成され、それがアルツハイマー病やパーキンソンズ病などの神経の変性疾患を引き起こすとことも考えられ、糖尿病の誘引になる可能性もあるという。
そして、バーテル博士もペトカウが研究したSODに注目している。つまり、肝臓や個々の細胞でつくられる活性酸素除去酵素(SOD)というのは、炎症を抑え、生体にとって有害な酸化物を処理する作用のある酵素であるが、細胞内でウランが作用することにより、SODの需要が増すこと、そしてSODが働くために必要なマンガンが、体内に取り込まれたウランなどの金属によって置き換わられてしまうと、SODの働きが損なわれ、修復メカニズムがうまく回らなくなってしまうというメカニズムも説明しているのである。
 湾岸戦争症候群におけるバーテルのSOD作用阻害に関する説明は、劣化ウランのみならず、その他の様々な金属、カルシウム、他のミネラル、過酸化窒素などのフリーラジカルの有害産物もSODの働きを妨げるとしており、ウランからの放射線とその他の物質との複合影響についても言及している(『ウラン兵器なき世界をめざして』2008より)。
 
6.適応応答、ホルミシスに対する考察
ところで日本においては、「微量の放射線なら体に良い」というホルミシス理論が広がっており、これに関する本や研究も数多くある。似たような用語で「適応応答」という専門用語があるが、こちらはホルミシスが個体レベルであるのに対し、適応応答は、細胞、分子レベルまで含む広い範囲での概念であるという。低線量放射線をあらかじめ照射しておくと、その後の高線量被爆に対する抵抗性が誘導させるという理論だが、確かに近年多くの実験系で立証されている。また前述のブルラコーワの研究でも、適応応答やホルミシスを示すような現象が観察されているのである。
しかし、適応応答には、三つの共通する特性があるという。すなわち、1)放射線抵抗性の獲得に時間がかかる(ブルラコーワはこの間に上に凸のペトカウ曲線の効果を見出したのであろう)2)100ミリグレイ以下の事前照射のみに効果がある 3)抵抗性の誘導は一時的で永続性がない。注目すべきは3点目の永続性がないという点だ。私たちが現実の環境における被曝問題を考えるとき問題となるのは、呼吸や食事によって長期にわたり取り込まれてしまう低レベル内部被曝問題であるから、一時的な効果を示す実験系の結果はあまり意味をなさない。
また、Brenner2003)による放射線に特に感受性の高い人についての乳がん誘発についての上に凸の曲線を描く研究もあるように、放射能に弱い人たちを防護するという視点に欠けている。幼児や胎児、免疫力の落ちている高齢者への影響、また一般人であっても既に受けている過剰な医療放射線、さらには後述する化学物質との複合作用なども考えれば、適応応答やホルミシスの理論を安易に実環境に適用させて、例えば「だから原子力施設から出される放射能は低レベルなので何も問題がない」とされることは、たいへん危険であると言える。
 
7.放射線と化学物質の複合影響
60年代には既にレイチェル・カーソンが名著「沈黙の春」の中で、放射線と化学物質との複合影響について警告を発している。本書においてもⅢ 「森林の死と放射能」の章において、放射線と化学物質の相乗効果について言及されている。しかし、放射線防護の世界では、どうやらこの複合作用についての研究はなかなか進んでいないようだ。
ICRP1990勧告では、放射線と他の因子に相互作用があり、複合的な影響を取り入れる必要性を認めているが、現在までにラドンと喫煙の相乗効果、また、原爆放射線と喫煙の相加的な複合影響(Pierce et al.2003)が報告されている例を除くと、データがほとんどないということで、防護体制の考慮には入れられていないのが現実だ。現代人は誰しもが必ず様々な化学物質に晒される。核時代以降、地球上の環境は人工放射能に汚染されていない場所は存在しない。それにもかかわらず、化学物質と放射線の複合汚染が考慮に入れられていないことは、放射線防護体制の重大な欠陥としてみる必要がある。
現実的には研究はまったく存在しないわけではない。本書にも引用されているムラサキツユクサの研究で有名な市川定夫埼玉大学名誉教授はその後さらに研究を発展させ、共同研究者らとムラサキツユクサにおける放射線と化学物質との相乗効果を90年代に立証している。まずは、1992年から1997年に、エックス線と4種類のアルキル化剤間と2種類のアルキル化剤間で、明白な相乗効果を見出した。そして、95年から98年にかけては、プロミュータジェンとエックス線間での相互作用を調べたところ、いずれも明白な相乗効果を示すほか、プロミュータジェンが花序内でペルオキシダーゼという過酸化酵素によって活性化され、変異原になることも発見したという。
また、本書に1990年、セラフィールドの再処理工場の周辺で小児ガンが10倍も増えていたことが、英国の著名な疫学者ガードナーによって明らかにされたが(本文Ⅴ-3「線量レベルの改定はまったく不十分」より)、このガードナーの調査の元となった研究が、日本の野村大成大阪大学名誉教授(遺伝学博士)が行ったマウスの研究であった。この時、ガードナーは、父親が子供を作る6ヶ月以内に被曝した場合は、わずか10ミリシーベルトでも白血病が45倍高い頻度で起こることを発見し、ガードナー自身当初信じていなかった野村博士のマウス実験のデータが、人間でも起きていることを知ることになったのであった。
ちなみに野村教授は1973年には既に放射線と化学物質の複合作用の研究を著している。マウスに少量のエックス線を当て、出生後に発がん性物質であるウレタンを投与すると、エックス線に被曝していない対照群と比べ、数倍の頻度で肺がんが発生することを発見している(ちなみにこの貴重な論文は専門誌すべてから掲載を拒否され、10年後に初めて国際誌に出たという)。野村博士はその後も放射線と化学物質の相乗効果に関する論文を数多く発表し、現在も、マウスへの放射線と化学物質による遺伝的影響を行っており、次世代においてマイクロサテライト突然変異を検出すると共に、現在も奇形、腫瘍発生、生活習慣病を含むあらゆる疾病との相関を調査中である。
 
8.小児や胎児への影響
次にECRR2003年報告に掲載されている以下の表を見てほしい。国連科学委員会(UNSCEAR)による1989年までの数値に基づいた核開発による被曝の地球規模における結果である。
まず、この表を見て驚くのが、ICRP自らが全世界で今までに核開発のために117万人ものガン死者、235万人ものガン発生を認めているところである。保守的な数値でも十分に恐るべき数値であり、ゴフマンの、「自分も含め、低線量放射線のリスクを知っていた科学者たちは、ニュールンベルグのような裁判にかけられるに値する」、という表現が、だいそれたものと思えなくなる数値である。さらにはECRRの評価数値では、左のICRPの数値のそれぞれ60倍近くとなっており、恐ろしいばかりである。
さて、もうひとつの驚くべき数値が、小児死亡、胎児死亡、生活の質の喪失がICRPの数値によるとゼロとなっている事である。放射線によりぜい弱な胎児や小児への影響についてこのような数値であったことに、驚きを禁じ得ない。
ところで、最近は胎児期の被曝によるガンのリスクは小児期の被曝と比べて4分の1と小さいことが分かってきたそうである。しかし、その理由は被曝によって傷ついた細胞が出生後まで持ち越されない事、個体レベルにおいても、自然流産によって淘汰されてしまうからであるというのである。もちろん、このような誕生前の死はカウントされない。まさしく物言えぬ胎児たちが犠牲となり、始めから亡きものとされてしまっている現状に背筋が寒くなる思いがする。ペトカウも、「放射線起因の脂質過酸化物は、流産のリスクの増加で知られる化学物質を誘導すると述べている(Ⅵ-11「生体内の防護メカニズム」より)。政府も真に「少子化問題」を憂いているのであれば、まずはこのような環境に起因する流産の問題に早急に対処すべきだ。
 
9.市民が知ることの重要性
 やたらと難しい専門用語が並ぶ放射線防護の世界であるが、実はこの地球上に住む私たちすべての健康にこれほど密接に関わる問題はない。核時代の幕開け以降、悲しいかな、地球上で人工放射能に汚染されていない地域は皆無となってしまったという。私はこのことを初めて知ったとき、非常なショックを受けたし、なぜかつて核兵器を使用したり、核実験を行った国々が、なんの責任も問われないでいるのか、不思議に思っている。
最近では、過剰な検査による医療放射線による発ガンの危険性も大きく取りざたされてきている。日本は世界でも最も放射線検査機器の台数が多く、全発ガンの4.4%が検査によるものという。もちろん、医療放射線は自発的に行なうものであるということ、また、実際に利益がリスクを超えた医療行為があるわけであるから、積極的に受けるべきものもあるだろう。しかし、不必要な検査や過剰な検査は避けるべきものであろうし、そのためには個人が受ける被ばく線量を管理すべきである。実際に英国では、管理体制ができてきている。
問題なのは、非自発的に、知らず知らずに受けている放射線の危険性である。日本でも、二酸化炭素問題などは大きく取り上げられるのにかかわらず、なぜか解決策がいまだに見出されていない放射性廃棄物の問題、そして本書でとりあげている環境中への放出放射能の問題、低線量被曝の問題が、ほとんど政治家の間で議論されない。やはりそこには、原子力産業と政治家、マスコミとの癒着が覆いかぶさって知るべき情報が回らないのであろう。私は外国人に時々、「なぜ被爆国の日本に原発がこのようにたくさんあるのか」という質問をされる。これについては第五福竜丸被曝事件で被曝をされた大石又七さんも『ビキニ事件の表と裏』に書かれているが、ビキニ事件直後の反核運動が絶頂期に達していた時、日本のマスコミ人とCIAとの間で「毒をもって毒を制す」という意図で平和的な原子力を国内に導入したという非常に政治的なかけひきがあったという。このいきさつは、NHKで放送された秀作ドキュメンタリー「原発導入へのシナリオ」でも詳しく報道された。決して安全が確立されたから導入された原発ではないのである。しかも日本は地震大国で、原発導入の際、英国の保険会社ロイズは地震を理由に加入を拒否したといういきさつがある。当時でさえ大事故が起きれば国家予算の2倍以上の損害と国土の4割が農業も営めなくなるという試算が出ていたのに強引に導入された原発。今回本書では、日常的な放射能放出だけでも危険であることを提起している。
ことは私たちと未来世代の命の問題である。日本においては原発がなくとも現在ある設備で電気は足りているが、もし仮に足りていなかったとしても、命にまさる問題があるはずがない。このことを端的に表したのが、本書にも出てくる、ケネディ大統領の言葉であった。ここでもう一度引用したい。
 
「骨にガンができ、血液が白血病にかかり、肺ガンになった子供や孫の数は、統計学的には自然発生の健康障害と比べて少ないかもしれない。しかし、これは自然に起こる健康障害ではなく、統計学の問題でもない。たった一人の子供の生命の喪失であっても、また我々の死後に生まれるたった一人の子供の先天性異常であっても、我々全員が憂慮すべき問題だ。 我々の子供や孫たちは、我々が無関心でいられる単なる統計学的な数字ではない」
 
 ちなみにケネディ大統領は、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を読んで衝撃を受け、同年、大統領諮問委員会を設置し、ウィズナー報告書を作らせ、農薬の使用を制限する法律の制定を促した。同年暗殺される前に、ケネディ大統領は、放射能と化学物質という2大環境汚染物質を規制する法律の制定に関わっていたのであった。
ところで本書で繰り返し放射線防護上不十分であると非難されているICRPの勧告は、法的拘束力を持たない。政治家もマスコミもあまり対処しようとしない中、私たちはこの非常に大きな影響力を持つ、隠された環境因子から自らと将来の世代をどのように守っていけばよいのか。私が最近聞きに行った放射線防護の専門家たちが集まった国際シンポジウムで、ある米国のパネリストからこのような発言があった。「現実的にある流れとしては、市民らの間で被害が生じ、彼らが裁判に訴え、注目を浴びるようになってから危険性が知らされ、初めて法体制が整ったりするものだ……」。非常に残念だが、これは今現在の現実であろう。しかし被害が生じてからでは遅い。市民が知ること、そして情報を得た市民が知らしめることの重要性を感じる。
 
10.おわりに
 私がこの現在にも続く被曝問題を初めて知ったのは、今から10年以上前に被曝問題労働者問題を教えてくれた福井県明通寺の中村哲演さんと元原発労働者で現地での原発労働組合創設者でもあった斉藤征二さんであった。私にとって、斉藤征二さんの被曝労働の実態の話はとても衝撃的で、迷惑を顧みずに泊り込みでお話を聞かせてもらったことを思い出す。その後何もできないでいる自分が情けないとずっと思っていたが、この本が被曝問題に関して、なんらかの一助になってくれればと願っている。また同じく被曝労働者の故平井憲夫さんのお話を載せた機関紙『アヒンサー』を佐藤弓子さんと共同発行し、精力的な活動をされている小田美智子さんには、この本の校正を全面的に助けていただいた(『アヒンサー』シリーズは原発についての重要な情報が満載の書物なので是非一読を勧めたい。Tel: 047-395-9727小田まで)。最後にこの本を始めに翻訳された、医師であり、自身が広島原爆被爆者である肥田舜太郎氏のお手伝いが縁あってできたことはこのうえない喜びであった。肥田氏の類まれなる経験は、去年出版された影書房の『広島の消えた日』に詳しい。6,000名を超える被爆者の治療をされながら、国内外の核廃絶運動に身を投じ、超多忙な時間の合間を縫って低レベル放射線関連の本を誰にも先駆けて5冊も訳されてきた肥田氏の功績は多大だと思う。肥田氏は94歳の現在も論文の翻訳に挑んでいる。私も今のところまだまだ勉強途中の身であるが、この問題に対する理解をさらに深めていければと思う。
 
                         20112
 
引用・参考文献
 
1.   肥田舜太郎著『広島の消えた日』影書房、2010
2.   ドネルW・ボードマン著『放射線の衝撃』肥田舜太郎訳、2008年(オリジナルは双信舎発行で絶版、現在は自費出版)
3.   放射線医学総合研究所編著『低線量放射線と健康影響』医療科学社、2007
4.   菅原務監修『放射線基礎医学』金芳堂、2009
5.   野村大成著『未来世代を脅かすもの』婦人民主クラブ、1997
6.   市川定夫著『新・環境学Ⅲ』藤原書店、2008
7.   E.J.スターングラス博士著『赤ん坊をおそう放射能』反原発科学者同盟、新泉社, 1982
8.   レスリー・フリーマン著『核の目撃者たち』中川保雄・中川慶子訳、筑摩書房、1983
9.   瀬名秀明・太田成男著『ミトコンドリアのちから』新潮文庫、2007
10.   J.M.グールド&B.A.ゴールドマン『死にいたる虚構』肥田舜太郎、斎藤紀訳、2008年(オリジナルは双信舎発行で絶版、現在は自費出版)
11.   J.M.グールド&E.J.スターングラス博士著『低線量内部被曝の脅威(旧題:オリジナルは双信舎発行「内部の敵」)』肥田舜太郎、斎藤紀、戸田清、竹野内真理共訳(緑風出版、2011年)
12.   綿貫礼子ほか著『誕生前の死』藤原書店、1992
13.   大石又七著『ビキニ事件の表と裏』かもがわ出版、2007
14.   ECRR欧州放射線リスク委員会2003年報告、山内知也監訳
15.   吉川敏一、河野雅弘、野原一子共著『活性活性酸素のすべて-健康から環境汚染まで』丸善株式会社、2009
16.   国際行動センター編『劣化ウラン弾』新倉修監訳、1998
17.   NO DUヒロシマ・プロジェクト『ウラン兵器なき世界をめざして』2008
18.   高木学校医療被ばく問題研究グループ著『受ける?受けない?エックス線CT検査』、2009
19.   丹羽靭負『天然SOD製剤がガン治療に革命を起こす』廣済堂、2005
20.   渡辺美紀子「連載・低線量放射線の影響をめぐって」(原子力資料情報室通信より)http://cnic.jp/modules/smartsection/item.php?itemid=3
21.   馬嶋秀行「酸化ストレス及び放射線障害における細胞内ミトコンドリアの役割」鹿児島大学歯学部歯科放射線学講座、2002
22.   エレーナBブルラコーワ他15名『低レベル放射線の特殊性とリクビダートルへの影響』(http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/saigai/Burla-J.html)ロザリー・バーテル著『戦争はいかに地球を破壊するか』振律かつみ、中川慶子訳、緑風出版、2005
23.   メアリー=ルイーズ エンゲルス著『反核シスター・ロザリーバーテルの軌跡』中川慶子訳、緑風出版、2008
24.   Permanet People’s Tribunal, International Medical Comission on Chernobyl (IMCC)“Chernobyl-Environmental, Health and Human Rights Implications”Vienna, Austria, 1996
25.   ロザリー・バーテル著「湾岸戦争症候群と劣化ウラン、低レベル放射線の危険性(英語のみ)」Gulf War Syndrome, Depleted Uranium and the Danger of Low-Level Radiation, Dr. Rosalie Bertell (http://www.ccnr.org/bertell_book.html)
*なお、上記論文の引用文献の筆頭に、本書『ペトカウ効果』が記されている。
 

訳者肥田舜太郎(ひだ・しゅんたろう)
1917年、広島市生まれ。1943年、日本大学専門部医学科卒業。
194586日、原爆被爆。直後から被爆者救援・治療にあたり、2009年の引退まで被爆者の診察を続ける。1953年、全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)創立に参加。全日本民医連理事、埼玉民医連会長、埼玉協同病院院長、日本被団協原爆被爆者中央相談所理事長などを歴任。1975年以降、欧米を中心に計30カ国を海外遊説、被爆医師として被爆の実相を語りつつ、核兵器廃絶を訴える。またこの間、アメリカの低線量放射線被曝に関する研究書を翻訳、普及に努め、内部被曝の脅威を訴え続ける。
●著書:『広島の消えた日』(初版:日中出版、1982年)、『ヒロシマ・ナガサキを世界へ』(あけび書房、1991年)、『ヒロシマを生きのびて』(あけび書房、2004年)、『内部被曝の脅威』(鎌仲ひとみとの共著、ちくま新書、2005年)、『広島の消えた日』(増補新版:影書房、2010年)
●訳書:『死にすぎた赤ん坊』(E・J・スターングラス著、時事通信社、1978年)、『放射線の衝撃』(D・W・ボードマン著、自費、1991年。08年よりPKO法「雑則」を広める会発行)、『死にいたる虚構』(J・M・グールド他著、斎藤紀との共訳、自費、1994年。08年よりPKO法「雑則」を広める会発行)、『内部の敵』(J・M・グールド他著、高草木博らとの共訳、自費、1999年。『低線量内部被曝の脅威―原子炉周辺の健康破壊と疫学的立証の記録』と改題出版、緑風出版、2011年)
訳者:竹野内真理(たけのうち・まり)
1967年生まれ。東京学芸大教育学部英語科卒、通翻訳者、フリーライター。元原子力資料情報室国際担当。現在、東京にある脱原発・環境市民団体のたんぽぽ舎にてヒバク研究会と国際署名のボランティアをしている。共訳書にThe Enemy Within』(『低線量内部被曝の脅威―原子炉周辺の健康破壊と疫学的立証の記録』肥田舜太郎、斎藤紀、戸田清、竹野内真理共訳、緑

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